エッセイのブログ、スタートします!

夫婦で撮影

エッセイは夫婦ものが多いです。すべった、転んだ、笑った、泣いたという感じです。人生を楽しくが根底のテーマです。


「 旅はわすれものから 」

「 旅は、忘れ物から 」 

 

 令和7年6月、妻が心待ちのラスベガス旅行に出かけた。私は前期高齢者になった妻とその友人女性、二人の元気さにやや気後れしつつ付き添う。浜松から新幹線に乗り静岡を過ぎた頃、妻が自信満々にパスポートのコピーを見せた瞬間、友人の一言で事態は一変。

「本物、持ってるよね?」妻の顔が見る間に青ざめた。

 

 忘れたのは、深夜に念のためにわざわざ抜き出した自宅のコピー機の上。しかも夫婦二人分。

新横浜で降り、「取りに戻るから」と言い残した妻の背中に、不思議な頼もしさを覚えた。

成田で待つ間、笑い話にしようと思いながらも、内心は落ち着かない。ぎりぎりで妻は走り込み、搭乗に間に合った。

 

 長い空の旅を経て辿り着いたラスベガスは、砂漠の真ん中に輝く人工の楽園だった。巨大ホテル、カジノ、フーバーダムの力強さ。

アメリカという国の活力を肌で感じた。翌日のグランドキャニオンでは、大地の息吹にただ立ち尽くした。

 

帰国後、妻は写真を整理しながら笑う。

「あの時、本気で全集中したのよ」。

旅の危機も時が経てば笑い話。それを友人たちの話の掴みで使っているではないか。ああ、したたかだ。

 

思えば、あの忘れものが、この旅をより深く記憶に刻んでくれたのかもしれない。